スポンサーリンク 重度開放性骨折 - 医療関係資格試験マニア
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某総合病院で日々、臨床で忙しい医師カズです。
各種医療職の資格試験問題に挑戦しつつ、資格を目指す方々を励ますブログです。
内容は、国内の医師、歯科、薬剤師、看護師国試など、さらには米国医師資格試験(USMLE)、米国歯科医師資格試験(NBDE)あたりの問題にも挑戦する予定です。
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今回は、私が大学在局中に専門にしていた分野:
重度開放骨折 severe open fractureに関する問題。

42_O13_openfx_x100_540.jpg 
https://www.aofoundation.org/Structure/Pages/default.aspx


109回医師国試からの出題


109A-47


109a47.jpg


109ag24.jpg


整形外科に興味ある方は、以下の問題集に挑戦ください。

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解答:MORをクリック


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解答、解説

よく吟味していくと、なかなか内容が濃く かつ マニアックな問題である。
整形外科専門医試験における口頭試問のビデオ症例に出てきそうな問題である。

本症例は重度軟部組織損傷を伴う前腕骨(radius & ulna)の開放骨折例である。
尺骨動脈は触れ、nail capillary refilling timeが正常、それを裏付けるように、
動脈造影では上腕動脈の分岐部、尺骨動脈から末梢にかけてよく描出されている。

開放骨折のgradeは、動脈再建を行わずに患肢温存 limb salvage 可能なようなので
Gustilo type (下図 参照)からいえば、type ⅢBに属するといえる。

8211-0550x0475.jpg
http://old.netterimages.com/image/8211.htm

さて、この症例に対する初期治療 initial treatment であるが、
血圧は安定し、他のviatal organの損傷なので、温存治療は可能なようである。

しかし、このような開放骨折に対して、まず行うべきことは、

golden period(受傷後6-8時間)内のデブリードマン



感染予防のための抗生剤の投与
(第1、2世代のセフェム系ないし、
PC系+アミノグリコシド系・ゲンタマイシン or カナマイシン) 

である。

これに加えて、破傷風予防のトキソイド接種も必要であろう。

選択肢には、抗生剤投与はないので、

正解;e デブリードマン ということになる。

dの皮膚縫合については、このような重度開放骨折で
即時縫合 primary sutureを行うことは、感染を惹起する可能性が高くなるため、
これは、明らかに ×

a 切断 か、b + c の温存処置については、判断が難しい。
ただ、最初に行うべき処置ではない。

ところで、切断 amputation か 温存 limb salvage のいずれの選択か?
ということについて、少し専門的に述べてみます。

こういった四肢損傷は、mangled extremity (ズタズタに損傷された四肢)と呼ばれ、
このような四肢を救済するか否かを決めるために様々な指標 score があります。

代表的指標として、

magled extremity severity score (MESS)というものがあります。

http://www.fastbleep.com/biology-notes/26/73/469 から引用)


9084_1.jpg 
    score 6点以下:温存salvage可能

9083_1.jpg 
本症例について、MESSを計算してみると、

1) skeletal and soft tissue injury:
 type 3に属し、radial arteryは損傷されているので、very high energy injuryのようである。
 ということで、4点。

2) limb ischemia:
 radial arteryの拍動は減弱しているが、perfusionは正常なため、1点

3) shock:収縮期血圧>90にて1点

4) age:51歳にて2点

合計すると、4+1+1+2 = 8となり、salvage可能圏を超える。
つまり、切断域に入ってしまう。

ただし、このscoreは主に下肢を対象に作成されたようなので、
この点数を元に切断と決めつけることは難しい。

経験とskillがあるhand/trauma surgeonであれば、再建を試みる症例であろう。

また、学生用の教科書レベルからいうと、このような重度開放骨折に対する初期骨接合は
創外固定の適応となろうが、判断は難しい。
国試レベルからみれば、安全をとって初期は創外固定を行った後に、
感染兆候がなければ、なるべく早急にプレートや髄内釘による内固定に変更するということか?

 
ただし、本症例は軟部組織損傷もひどいため、骨接合術と同時に形成外科医の協力を得て、
皮弁(flap)などを用いた軟部組織再建が必要であろう。
(Fix and flap: the radical orthopaedic and plastic ... - Bone & Joint)

本症例では、下図のような再建結果になるでしょうか?

eplasty12e16_fig1c.gif
http://www.eplasty.com/index.php?option=com_content&view=article&id=640&catid=173:volume-12-eplasty-2012


また、骨接合術や皮膚再建が終了しても、このような重度上肢損傷では、
腱の再建や、腱剥離術、神経剥離術といったような修正手術が何度も必要となろう。

ということで、整形外科医の立場から、かなり掘り下げてみました。

ちなみに、このような開放骨折に関係した小生の愚作についての抄録は以下のようなものがあります。
興味あれば、クリックください。

New scoring system predicting the occurrence of deep infection in open upper and lower extremity fractures: efficacy in retrospective re-scoring.

Yokoyama K, Itoman M, Nakamura K, Uchino M, Nitta H, Kojima Y.

Arch Orthop Trauma Surg. 2009 Apr;129(4):469-74.


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2015/07/09 23:14 整形外科 TB(-) CM(0)
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