スポンサーリンク 救急外傷における治療の優先順位:108E60-62 (改訂) - 医療関係資格試験マニア
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救急外傷における治療の優先順位に関する問題

歯科ではあまり関係ないですが、
口腔外科外傷と麻酔がらみで出されるかもしれません。

連問にて改訂

医師国家試験過去問データベース から


108E60-62


108e60.jpg


108e61.jpg


108e62.jpg


解答:MOREへ



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解答

108e60.jpg



正解  b


comment:
交通外傷。
「現症」の欄から、各臓器の評価を丁寧に行いたい。


108e61.jpg 


(1) 顔面:挫創のみ。
(2) 口腔:出血と凝血塊の喀出あり。窒息の原因となりかねず、緊急性が高い。
  また、どこからの出血なのか、を調べる必要あり。
(3) 胸部:右前胸部の圧痛と呼吸音の減弱あり。
      (血)気胸の可能性。
(4) 右下肢:外旋位で右下腿の変形と開放創あり。
        太い動脈を損傷している可能性もあり、精査したい。
(5) 腹部:超音波検査にて液体貯留を指摘。
      肝臓など大きな臓器の損傷による腹腔内出血の可能性もあり、精査したい。

以上を丁寧にチェックできれば、最も緊急性が高いのは(2)、
すなわち気道確保であることが分かるはず。

ただし、選択肢にはすべて気道確保についての方法が並んでおり、少しむずかしい。

a 口腔内の凝血塊を除去せずして気管挿管はできない。

b 正しい。
  まず行うべきである。
  これだけで呼吸状態が改善しない場合は、a・c・dなどを試みることとなる。

c・d 有効ではあるが、bの優先度が高い。

e 経鼻では現時点の病態に対処することは困難と思われる。


解説:(日経メディカル 医師国試 1問1答 から)

19歳男性、オートバイ事故の高エネルギー外傷です。
外傷初療はJATEC「外傷初期診療ガイドライン日本版」等を根拠に行うことになりますが、
JATECの基本構造はPrimary SurveyとSecondary Surveyの二本柱で成り立っています。

すなわち、
前者は生理学的な評価を行い緊急性を評価する段階であり、
後者は、解剖学的な評価を行い全身をくまなく診察するという段階です。

本問はPrimary Surveyがテーマとなっています。
Primary Surveyでは、ABCDEアプローチを採用します。
つまり、A(気道)、B(呼吸)、C(循環)、D(中枢神経の異常)、E(脱衣と体温管理)をその順で診察していきます。
本文から得られる情報をABCDEごとにまとめると以下のようになります。

A × 会話困難・顔面外傷(口腔からの出血)
B × RR 28、SpO2 100%(FiO2 1.0)、右呼吸音減弱
C × PR 124、BP 92/72、FAST陽性
D ○ 意識ほぼ清明
E × 顔面ざ瘡、右前胸部圧痛、右下肢外旋位、右下腿の変形・開放創

 このようにABCDEごとに評価すると診療の優先順位が付きます。

より上流の障害が下流に影響を及ぼします。

例えば、気道が開通していなければ、呼吸の異常(低酸素血症)をきたし、
その結果、循環の異常を来たします。

さらには、循環が悪くなると脳血流が低下するので、中枢神経系の影響を受けるという負の連鎖が生じます。

このような理由から、ABCDEアプローチでは、その順番通りの優先順位となります。
本症例では、ABCEの異常を認めますが、真っ先に介入すべきはもちろんAとなります。

<選択肢考察>
b まずは侵襲の少なく、かつ効果が期待できる口腔内吸引を行います。本症例では、口腔内出血があり、
これが気道閉塞のリスクになっています。
サクションをするだけで、気道が開通する可能性があり最優先の処置となります。
また、気管挿管をするにしても、口腔内吸引は必須の手技(口頭展開時に視野が悪かった場合、
まずサクション)なので、気管挿管よりも先に実施する手技となります。

a 上述のように、Aの異常を解除する必要があるので、口腔内のサクションを行なった上でなお、
気道に対して介入の余地があるのであれば迷わず気管挿管を行います。

d、c 気管挿管困難例で考慮されうる選択肢です。
侵襲度は輪状甲状靭帯(or間膜)穿刺の方がより低侵襲であり、ベッドサイドでも簡便に施行することができます。
一方、緊急気管切開は30分ほど要するちょっとした小オペになります。
ERやICUで気管切開を行うこともありますが、予定手術であれば手術室で行うのが一般的な手技です。
したがって、順序としてはd→cとなります。

e 経鼻エアウエイも気道確保の一種ですが、主に舌根沈下に伴う気道閉塞で功を奏すると覚えましょう。
確実な気道確保という意味合いでは、1、3、4と比べて圧倒的に劣ります。


108e61.jpg


正解 d

comment:
a 頭部については言及がなく、本文の情報だけからはなんとも言えない。
b 顔面の挫創については優先順位が低い。
c 頸椎損傷を思わせる情報についても記載がなく、本文の情報だけからはなんとも言えない。
d 正しい。(血)気胸の可能性があり、胸部エックス線撮影が有用。
e 下肢の主幹動脈についても評価したいが、単純エックス線では骨の評価しかできず、
  現時点ではdを選べ、という出題者のメッセージと解するべき。


108e62.jpg

正解 c

comment:
a 外科医と整形外科医の到着前に血液型の確認と輸血の準備を行っておくべき。

b・e どんな事項であれ、「検討する」だけであれば行って問題ない。

c 誤り。
  いくら整形外科医の方が先に到着するからといって、それにより手術の順番が決まる、
  というわけではない。
  腹腔内出血が重症な場合、整復固定術中に失血死してしまうかもしれないためである。

d 現時点では110/60mmHgと血圧が回復しているも、手術まで待機時間が発生しそうな今、
  急激な血圧変動に備えて動脈血圧モニタリングを行うべきである。


解説

 輸液でバイタルサインが改善したので、responderと判断します
(輸液速度を下げて、再度血圧が下がる場合にはtransient responderと言います)。

ABCを安定させた上で頭部CTを実施し、Secondary Surveyに移ります。

その結果、C(循環)の異常の原因として、腹腔内出血が見つかりました。
また、右脛骨・腓骨の開放骨折に対しても治療が必要と判断したという文脈です。
したがって、優先順位は、次のようになります。

(1)出血源にアプローチして止血する <最優先>
(2)四肢開放骨折の治療 <整形外科医コンサルト>

 本問では、外科医にコンサルトしましたが、腹腔内出血の止血は、開腹手術以外に、
放射線科医によるIVRという方法があります。
開腹手術と同等の止血効果が得られ、かつ非侵襲的なので動脈塞栓術は積極的に推奨されそうです。

 循環の安定のために輸液を実施して、ひとまずは血圧が上がりました。
このまま輸液をしても良いのですが、希釈が起こり貧血がさらに助長されるので、この時点で輸血を考慮します。
また、橈骨動脈が触れる程度の血圧が得られているので、動脈ラインを取って、
動脈血圧のモニタリングを開始するのも良いでしょう。

 状況を整理すると、外科医が対応できるのは3時間後であり、
本症例の超急性期の初療には間に合わなそうな印象です。

整形外科医は30分後には診療に参加できそうなので、それまでの間に動脈塞栓術が実施できれば、
上記の(1)(2)の優先順位を満たすこともできそうです。
それが適わないのであれば、近くの救命救急センターへ転院するしかないでしょう。
 以上より、観血的整復固定術が不適となります。固定術ではなく、創部の止血やデブリドマンが優先されます。

[コメント]
 本問は現場の判断をテーマとしており、救急領域の問題としては臨場感のある良問です。
JATECの作法をこなしながら、医療資源を考えながら方針を決めていくという現場さながらの雰囲気も汲み取れそうです。
今後は、このようなdecision makingを題材にした問題も増えてくるかもしれません。

(解説、コメント:日経メディカル 医師国試 1問1答 から)


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2017/06/28 06:00 総合診療・救急・症候学 TB(-) CM(0)
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