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かず

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各種医療職の資格試験問題に挑戦しつつ、資格を目指す方々を励ますブログです。
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107回医師国試からの出題。

先週末に似たような症例を経験し、たまたま国試の問題で見つけたので、
呈示しました。


107A-28

問題

65 歳の女性。全身倦怠感と微熱とを主訴に来院した。
1週前から全身倦怠感を自覚していた。
3日前から37 ℃台の微熱が続いているという。
5年前から関節リウマチで抗リウマチ薬と副腎皮質ステロイドとを服用中である。
意識は清明。身長156 cm、体重46 kg。体温37.4 ℃。
脈拍92/分、整。血圧120/70 mmHg。
呼吸数14/分。SpO 2 97 % (room air)。
心音と呼吸音とに異常を認めない。
血液所見:赤血球446 万、Hb 13.0 g/dl、Ht 39 %、
白血球7,300(桿状核好中球20 %、分葉核好中球46 %、
好酸球1%、好塩基球1%、単球10 %、リンパ球22 %)、血小板16 万。
CRP 2.6 mg/dl。
胸部エックス線写真で右側下肺野に多発結節影を認める。
肺野条件の胸部単純CT(別冊No. 7A)と
気管支肺胞洗浄[BAL]液の墨汁染色標本(別冊No. 7B)とを別に示す。

この疾患について正しいのはどれか。

a 内因性感染である。
b 血清抗原検査の感度は高い。
c 血清β-D-グルカン値は上昇する。
d 発症予防に ST 合剤 の内服が有効である。
e 原因微生物はAspergillus fumigatusである。


医107A-28



解説、解答はMOREを押して

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解説と解答

RAで抗リウマチ薬と副腎皮質ステロイド投与で加療中の肺炎。
ということで、日和見感染であることは予想される。

候補に挙がってくるのは、

細菌類として、Tbc、MRSA、緑膿菌、レジオネラ、セラチア等
真菌類としては、アスペルギルス、クリプトコッカス、PSP、カンジダ
ウィルスとして、サイトメガロ(CMV)

などである。

本例の画像所見では、
CT上は、空洞を伴う多発結節性陰影
墨汁染色:周囲に莢膜を持つ球形の酵母様菌体
が認められる。

また、選択肢からは、β-D-グルカン値のことも聞いてきているので、
おそらくは真菌類のことについての問題であることも察しがつく。

ということでこの菌体特徴からして最も疑われるものは、クリプトコッカス症である。


ちなみに、
アスペルギルスのGrocott染色標本をみると、

アスペリギルス 

http://pathology.or.jp/corepictures2010/05/c09/03.html



上の図のように球体でなく菌糸がよく伸びた構造を示すため、
本症例とは異なる。



CMVのBALF洗浄液の所見
CMV 染色像 

病理コア画像 http://pathology.or.jp/corepictures2010/05/c08/04.html

 

ミクロ像(パパニコロウ染色強拡大):

 BAL(気管支肺胞洗浄)液の細胞診でも発見される。

フクロウの目(owls eyeと称される核は特徴的である。


墨汁染色ではないが、似たようなBALF中の核封入体細胞が見られる.

しかしながら、
CMVの場合、PSP同様に胸部XP, CT上、
肺野全体がすりガラス用陰影を呈し、
本症例のように空洞を伴う多発結節性陰影は呈さない。



β-D-グルカンについて

真菌感染症のスクリーニングに有用。
基準値:単位(pg/ml)11.0以下

原発性肺クリプトコッカス症ではβ-D-グルカンの上昇をみることは非常に少なく
このため代用として莢膜多糖抗原が測定されます
(血清および髄液中のクリプトコッカス・ネオフォルマンス抗原として測定)


さらなるアドバイス

莢膜とは (Wikipediaから)

莢膜は、ドイツ語のKapsel(カプセルと同語。英語のcapsule
 )に対する訳語である。
「膜」という名称が付いているが、細胞膜や核膜などのような細胞組織学的な膜(脂質二重膜)ではなく、
高分子からなるゲル状の粘質物が菌体表面にほぼ均一な厚さで付着して出来た層状の部分である。
細菌によっては、この層の部分と菌の周囲との境界線が明瞭になり、光学顕微鏡下で、
あたかも菌体の周囲にもう一層の膜を持っているように見えるものがあり、
このような場合、この層状の部分を莢膜と呼ぶ。

一方、菌によっては分泌された粘質物と周囲の境界が不明瞭で、形状も一定でないものがあり、
このような場合には粘液層(slime layer)と呼ばれるが、形態上の違いを除けば、
本質的にはほぼ同様のものである。

また、これらと類似したものとして、他にバイオフィルムが知られている。
分泌した大量の粘質物によって複数の菌体を覆い包み、また物体の表面に強く付着して、
増殖生存のための「場」を作り上げたものである。

莢膜は一部の細菌だけが作り出す構造物であり、菌種あるいは菌株によってそれを産生するかどうかが異なる。
すなわち、同種の菌であっても莢膜を作る菌株と、作らない菌株とが存在する。
また、同じ莢膜を作る菌株であっても、培養や生育の条件によっては莢膜を形成しない場合がある。

一般に病原細菌の場合、動物に感染したときには莢膜を形成するが、
そこから分離して純粋培養すると形成しなくなることは珍しくない。

また、培養した菌に熱処理などを行うと、大部分の莢膜は比較的容易に分解され、
内部の菌体が露出する。
このことは細菌の抗原型を決定する際に利用されるが、
大腸菌のA型莢膜のように耐熱性の莢膜も一部には存在する。

capsule 
莢膜および類似の構造物
1. 莢膜: ほぼ均一な厚みで周囲との境界が明瞭。
2. 粘液層: 不定形で境界不明瞭。
3. バイオフィルム: 物体表面に層を形成し、複数の菌が内部で生存

★ 莢膜の抗原性

多糖類は、タンパク質に比べると劣るものの、抗原として認識されて、
特異的な抗体の産生を誘導しうる性質(抗原性)を持つ。
このため莢膜には、それを構成する多糖類に由来して、
菌体そのものの表面とは異なる抗原性が存在する。
細菌表面の抗原分子(外膜抗原、鞭毛抗原など)と同様、
莢膜抗原の抗原性もまた菌株によって違いがあるため、
この違いを利用して、同一の種に属する細菌をさらに細かく分類
することが可能である。


ということで、


A:×クリプトコッカスは主に、鳩などの糞で増殖、経気道的に肺内に吸入される外因性感染である。
B:○血清抗原検査の感度は高い。グルクロキシロマンナ抗原(莢膜多糖抗原)を検出。
C:×原発性肺クリプトコッカス症ではβ-D-グルカンの上昇をみることは非常に少ない。
D:×ST合剤は、ニューモシスチスの治療法。
E:×原因はアスペルギルスではなく、クリプトコッカス

解答 b

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2015/04/28 06:30 感染症・微生物学 TB(-) CM(0)
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