産科学 定期試験 対策
http://jintus.blogspot.jp/2014/08/obstetrics-and-gynecology-review.htmlに続き某大学の卒試復元問題から
http://tanakyu.fc2web.com/6study/kakomon/4f/4_juta_15s.htmかなり、難しそうです。
<産科>
1.通常の妊娠検診で行わない項目をひとつ選べ。 a.子宮底長の計測 b.体重測定 c.血圧の測定 d.検尿 e.血糖値の測定 |
[解答]e
[解説]一般の妊婦検診では体重測定、血圧測定、尿蛋白および尿糖検査、腹囲および子宮庭長の測定は必須検査事項である。
2.妊娠に伴う母体の生理的変化に関して正しいものをひとつ選べ。 a.妊娠中期に血圧が上昇することが多い。 b.妊娠中期に心胸郭比(CTR)が低下することが多い。 c.妊娠初期に拡張期雑音を聴取することが多い。 d.妊娠中期に血中酸素分圧が低下することが多い。 e.妊娠後期に血中二酸化炭素分圧が低下することが多い。 |
[解答]e
[解説]a.妊娠中期には血圧はわずかに低下する事が多い。 b.CTRは増加する事が多い。
c.収縮期雑音を聴取する事が多い。 e.過換気傾向となるので血中二酸化炭素分圧は低下する事が多い。
3.正しいものをひとつ選べ。 a.プロゲステロンは妊娠中を通じて主に妊娠黄体から分泌される。 b.ヒト絨毛性ゴナドトロピンは妊娠初期に急増し中期以降は低値となる。 c.ヒト胎盤性ラクトーゲンは妊娠の進行とともに低下する。 d.エストリオールは母体副腎で産生され胎児に移行する。 e.プロゲステロンの下垂体刺激で妊娠中のプロラクチンが増加する。 |
[解答]b
[解説]a.妊娠黄体がプロゲステロンの主要産生源として働くのは妊娠6〜7週頃までで、以後は絨毛が主要産生源となる。
c.ヒト胎盤性ラクトゲンの母体血中濃度は妊娠週数が進むに従って増加する。
d.母体尿中エストリオールは胎児副腎で生合成されたデヒドロエピアンドロステロンサルフェイト(DHEA-S)がタイ時間像で16α-OH-DHEA-Sとなり、これが胎盤でエストリオールに転換され母体に移行した後、母体肝臓で抱合化され腎臓から尿中に排泄される。
e.プロゲステロンはプロラクチンの作用を抑制する。
4.20歳の大学生。初経は10歳。12歳頃より月経は整順であったという。平成15年9月1日から6日間の月経があった。10月1日から月経より少ない性器出血が2日間あった。10月15日に少量の性器出血と下腹部痛を訴えて来院した。内診で子宮体部はやや増大し柔らかく、右付属器領域とダグラス窩に圧痛を認めた。尿中hCG1000単位陽性であった。正しいものをひとつ選べ。 a.最初に子宮外妊娠の診断を目的に腹腔鏡検査を行う。 b.ダグラス窩穿刺の前に経膣超音波断層法が有用である。 c.頚管妊娠を除外診断するために子宮鏡検査が必要である。 d.卵管流産の可能性もあるので卵管鏡が有用である。 e.卵巣妊娠の可能性もあるので骨盤MRI検査が必要である。 |
[解答]b?
5.28歳の経産婦。最終月経は平成15年6月12日から5日間。平成15年8月8日に当科を受診し、妊娠8週1日と診断した。本日(平成15年12月11日)、午前6時から1時間に6回の有痛性子宮収縮を自覚し、午前8時に来院した。来院時、子宮収縮は5分毎で、胎動は良好である。内診所見は,外子宮口開大度2cm、展退度60%、先進部は児頭小泉門で下降度sp-2、子宮口位置は中央、硬度中等度であった。胎児心拍数陣痛図では、胎児心拍数基線は140bpm、reactive patternで、子宮収縮の頻度は8回/60分、持続時間は40秒であった。次の処置のうち正しいものをひとつ選べ。 a.酸素投与 b.β2刺激剤の点滴静注 c.オキシトシンの点滴静注 d.帝王切開術 e.経過観察 |
[解答]b
[解説]本症例は切迫早産であり、治療を行う必要がある。β2刺激薬投与、頸管縫縮術など。
a.胎児心拍数基線はreactive patternで、胎児は低酸素状態になっていない。
b .β2刺激薬は子宮収縮抑制作用がある。 c .オキシトシンは子宮収縮誘発作用がある。
6.次の文を読み、1)と2)の問に答えよ。 23歳の初産婦。既往歴・家族歴に特記すべきことはない。妊娠8週より近医にて妊婦検診を受けていた。妊娠28週より浮腫と蛋白尿が出現し、塩分制限の指導を受けていた。妊娠32週5日、午前1時より頭痛および右上腹部痛が出現し軽快しないため、同日午前9時に当科を紹介され受診した。来院時所見は、身長156cm、体重62kg、呼吸数18/分、子宮底長24cm、腹囲82cm、血圧186/120mmHg、蛋白尿(3+)、全身に浮腫を認めた。理学的所見では右季肋部の圧痛および深部腱反射の亢進を認めた。膣鏡診で羊水流出は認めなかった。内診所見は、外子宮口開大度1cm、展退度40%、先進部は児頭小泉門で下降度sp-2、子宮口位置は後方、硬度中等度であった。胎児心拍数陣痛図では、胎児心拍数基線は140bpm、reactive patternで、子宮収縮の頻度は4回/60分、持続時間は20秒であった。一般末梢血検査では、白血球数6300/μl、ヘモグロビン値13.6g/dl、ヘマトクリット値40%、血小板数9.8×104/μl、血液生化学検査では、総蛋白5.9g/dl、アルブミン3.3g/dl、BUN13mg/μlクレアチニン0.7mg/dl、総ビリルビン値0.8mg/dl、AST125IU/l、ALT40IU/l、LDH563IU/ldであった。 6−1)まず行うべき処置として正しいものをひとつ選べ。 a.アンギオテンシン変換酵素阻害剤の投与 b.フェノバルビタールの投与 c.利尿剤の投与 d.解熱鎮痛消炎剤の投与 e.硫酸マグネシウムの投与 6−2)この症例の合併症として最も疑う疾患をひとつ選べ。 a.血小板減少性紫斑病 b.急性肝炎 c.常位胎盤早期剥離 d.HELLP症候群 e.子癇 |
[解答]1)d 2)d
[解説]妊娠28週より浮腫と蛋白尿が出現しており、来院時に高血圧、全身浮腫、蛋白尿3+がある事からこの患者は重症型の妊娠中毒症である。1)妊娠中毒症に対しては血圧の改善(降圧薬)、抗凝固療法、血小板凝集抑制を病状に応じて適せん行う。子癇に対しては抗痙攣剤を使用する。本問では妊婦への投与禁忌薬剤を確認しておかねばならない。ACE blocker、フェノバルビタール、利尿剤は禁忌である。硫酸マグネシウムは鎮痙剤として使用するが、本症では痙攣発作は起こっておらず、使用するにはいたらない。解熱鎮痛消炎剤は血小板凝集抑制を目的として使用する。2)HELLP症候群は妊娠中毒症に溶血(Hemolysis)、肝酵素の上昇(Elevated Liver enzymes)、血小板減少(Low Platelet count)を示す症候群で、本症例で右上腹部痛、肝酵素の上昇(AST、LDH)、血小板減少がみられ、疑いやすい。参考:New産婦
7.25才、G1P0の妊婦。分娩予定日は平成15年2月10日である。本日(12月11日)、午前5時00分に腹痛と少量の性器出血を自覚し、午前8時に来院した。来院時、子宮収縮は持続性で、内診所見は外子宮口開大度3cm、展退度60%、先進部は児頭で位置sp-2、小泉門を2時の方向に触知し、胎胞および赤色持続性の出血を認める。胎児心拍数は90bpm。超音波断層法で胎盤の厚さは8cm。検査所見として考えにくいものをひとつ選べ。 a.赤枕値の亢進 b.血小板数の減少 c.APTTの延長 d.FDPの上昇 e.凝固時間の延長 |
8.糖尿病合併妊娠について正しいものをひとつ選べ。 a.日本では1型より2型糖尿病の合併妊娠が多い b.妊娠中は経口糖尿病薬を使用する c.インスリンの需要量は妊娠期間を通じて一定である d.糖尿病合併妊娠において形態異常児の発症頻度は一般頻度とは差異はない。 e.1型(インスリン依存型)糖尿病では巨大児出生の頻度が高い |
[解答]a,d
[解説]b.妊娠中は食事療法とインスリン療法を行う。 c.インスリンの使用量は随時変化する。
9.次の文を読み、1)と2)の問いに答えよ。 26歳、初産婦。既往歴・家族歴:特記事項なし 現病歴:平成15年3月6日から7日間を最終月経として妊娠成立し、平成15年5月8日に当科を受診し、妊娠9週0日と診断した。以後、当科で妊婦検診を受けており、妊娠経過は順調で、胎児の発育も良好であった。本日(平成15年12月11日)、午前6時頃より痛みを伴う10分毎の子宮収縮が出現し、午前8時に当科に入院となった。入院時、身長158cm、体重61kg、血圧120/68mmHg、体温36.2℃、子宮底長32cmであった。膣鏡診で、羊水の流出はなく、血性粘液調の分泌物を認めた。内診所見は、子宮口開大2cm、展退度70%、児頭の位置-1、子宮口の位置 中、硬さ 軟であった。胎児心拍数陣痛図では心拍数基線140bpm一過性頻脈を認め、一過性徐脈は認めなかった。子宮収縮は4分毎に認めた。陣痛発来と診断し、胎児心拍数陣痛図をモニターしながら分娩経過を観察した。 9−1)入院時の内診所見におけるビショップスコア−は何点か a.5点 b.6点 c.7点 d.8点 e.9点 本日13時の内診所見は子宮口開大7cm、展退度81%、児頭の位置+1、子宮口の位置 中、硬さ 軟であった。また、先進部の小泉門を1時方向に触知した。陣痛周期は7分で、陣痛の持続時間は60秒であった。 9−2)この時の診断として正しいものをひとつ選べ。 a.正常分娩経過 b.回旋異常 c.原発性微弱陣痛 d.続発性開大停止e.頸管塾化不全 |
9-1)[解答]d
[解説]ビショップスコアーとは頸管成熟度を点数化したものである。
子宮口開大度2cm → 1点 展退度 → 2点 児頭の位置-1 → 2点
子宮口の位置 中央 → 1点 子宮口の硬さ 軟 → 2点
9-2)[解答]a
10.次の組み合わせで正しいものをひとつ選べ。 a.TORCH症候群 − asymmetrical IUGR b.胎盤機能不全 − symmetrical IUGR c.染色体異常 − asymmetrical IUGR d.母体糖尿病 − symmetrical IUGR e.妊娠中毒症 − symmetrical IUGR |
[解答]d or e
[解説]IUGRは、従来より体型上の特徴から2つの型に分類されて論じられてきた。すなわち、身長や頭部のサイズも小さく、全体としてバランスのとれたsymmetrical IUGRと頭部の大きさの割に体重の少ない痩せ型のasymmetrical IUGRである。染色体異常など胎児自身の内的因子が発症要因である場合、頭部も含め全体に身体の小さいsymmetrical typeとなることが多い。一方、妊娠中毒症や胎盤機能低下など外的環境因子による胎児栄養障害の場合、脂肪の蓄積の少ない痩せたasymmetrical typeになることが多い。
以上のことから、先天性感染症であるTORCH症候群と染色体異常はsymmetrical、胎盤機能不全、母体糖尿病、妊娠中毒症はasymmetricalとなる。そうなると答えがなくなってしまうが、重症の妊娠中毒症や重篤な母体合併症などでは、妊娠早期より胎児環境が悪化し胎児の発育遅延が生じ、栄養障害型であってもsymmetrical IUGRの体型を呈する。となると答えはdかeとなる。ちなみに、2000年の卒試の解答では母体糖尿病を重篤な母体合併症として選択していた。(NEW p208~209)
11.子宮近の収縮について正しいものをひとつ選べ。 a.ヒト子宮筋は内側の輪状筋を外側の縦走筋に分類される。 b.妊娠10週では子宮筋のオキシトシン感受性は亢進する。 c.プロゲステロンは子宮筋の収縮を引き起こす。 d.マグネシウム製剤は子宮筋の収縮を抑制する。 e.プロスタグランディンは子宮筋の収縮に関与しない。 |
[解答]d
[解説]a.×子宮筋層は平滑筋層から成り、筋線維の走行形式により外縦層、中輪層、内縦層の三層に分けられる。(NEW p5)
b.×妊娠10週ではなく妊娠末期とくに第10月になると、子宮筋細胞のオキシトシンやプロスタグランディンへの感受性が増加する。(NEW p254)
c.×プロゲステロンは分娩前に消退し、子宮筋の収縮を引き起こすものではない。
d.○硫酸マグネシウムには子宮収縮抑制作用がある。これはMg2+ が神経末端でのアセチコリン放出を抑制する結果、筋の弛緩が得られるものと考えられている。(NEW p344)
e.×プロスタグランディンとオキシトシンが子宮収縮を促進する。
12.図1は、妊娠32週の胎児上腹部の超音波横断像である。考えられる疾患をひとつ選べ。  a.食道閉鎖症 b.水腎症 c.臍帯ヘルニア d.十ニ指腸閉鎖 e.髄膜瘤 |
[解答]d
[解説]図1の超音波断層像にてdouble bubble signが認められるので、十二指腸閉鎖である。
13.羊水過多の原因となりにくいものをひとつ選べ。 a.双胎間輸血症候群 b.食道閉鎖症 c.胎児水腫 d.胎盤損傷 e.潜在性二分脊椎 |
[解答]e
[解説]羊水過多は何らかの原因で羊水の産生が増加するか、喪失が減少することにより生じる。
a.受血側の循環血液量が増加すると、多尿となり羊水過多になる。(NEW p192)
b.羊水吸収障害のため羊水過多となる。(NEW p198)
c.原因は不明だが羊水過多となる。(NEW p198)
d.胎盤が損傷し、羊水循環に障害がおこると羊水過多となる。
e.二分脊椎は開放性の場合、脳脊髄液が漏出し羊水過多になるが、潜在性ではなりにくい。
14.頸管開大度曲線(Friedman)について正しいものをひとつ選べ。 a.緩徐期(latent phase)は主として展退度が進行する。 b.開大度7〜8cmで活動期(active phase)に入る。 c.活動期は麻酔で遷延する。 d.開大度10cmで児頭は固定する。 e.急昇期(maximum slope)には初産婦で2cm/時間以上開大する。 |
[解答]e
[解説]a.×初産婦は展退後に子宮口が開大し、経産婦では子宮口開大が展退に先行する。展退は緩徐期(latent phase)に進行するとは決まっていない。(Compass p320)
b.×初産婦では子宮口開大2.5cmから活動期に入る。(NEW p255)
c.×活動期(active phase)でなく緩徐期(latent phase)が外部からの機械的な刺激や薬剤投与の影響を受けやすい。(NEW p255)
d.×固定の時期は初産婦では第10月初めに、経産婦では陣痛発来時に起こる。
e.〇Friedman曲線から急速開大期は初産婦で2.5cm/h、経産婦で3cm/h、開大している。
15.図2は、妊娠38週0日で陣痛発来し、入院となった初産婦のパルトグラムである。先進部は児頭で分娩経過中に破水は認められていない。正しい記述をひとつ選べ。 a.緩徐期(latent phase)から、既に分娩進行に異常が認められている。
b.児頭は固定しているので、児頭骨盤不均衡は否定してよい。 c.開大度の進行に比べて、展退度の進行が不良である。 d.活動期(active phase)での分娩停止と判断される。 e.遷延分娩の状態であり、帝王切開すべきである。 |
[解答]d
[解説]初産婦で展退、開大が進行しても、先進部がSp-2から下降しておらず、CPD(児頭骨盤不均衡)が疑われる。11時には展退と開大も進行が止まり、active phaseでの分娩停止と考えられる。CPDが疑われる場合は、超音波検査による児頭大横径計測とⅩ線骨盤計測を施行して、CPDと確定診断されたら、帝王切開を行う。それ以外は帝王切開の準備をして陣痛誘発法により経膣分娩を試みる(試験分娩)。(NEW p265-266)また、Sp+1~+2の時にCPDは否定できる。(Compass p389)
16.13才、G2P0の妊婦。妊娠39週に3分毎の陣痛を訴えて来院した。内診で外子宮口は全開大。諸検査の結果、産科医は骨盤入口部における児頭骨盤不均衡と診断した。本患者に認められない所見をひとつ選べ。 a.Seitz法(+) b.児頭位置Sp-3 c.対角結合線14cm d.低在横低位 e.児頭大横径11cm |
[解答]d
[解説]低在横低位とは児頭が第2回旋を行うことなく下降して骨盤底に達し、分娩進行が停止した場合をいい、扁平骨盤の場合におこる。この症例は骨盤入口部における児頭骨盤不均衡であるので、低在横低位にはならない。他の所見は児頭骨盤不均衡に矛盾しない。
17.胎児心拍数陣痛図上、non-reassuring FHR patternと診断される所見をひとつ選べ。 a.早発一過性徐脈 b.遅発一過性徐脈 c.基線細変動の減少 d.軽度変動一過性徐脈 e.心拍数基線100bpm |
[解答]b
[解説]遅発一過性徐脈は子宮胎盤循環不全によって発生し、胎児仮死と診断される。遅発一過性徐脈に細変動消失を伴うときは重症であり、急速墜娩が必要となる。(NEW p282,p333)
18.28歳の1回経産婦。妊娠経過は順調であった。妊娠39週2日に自然陣痛発来し、入院となった。陣痛発来から約6時間後に3870gの男児を頭位経膣分娩した。分娩時の出血量は100mlであった。児娩出後30分経過しても胎盤の剥離徴候を認めなかったため、臍帯を軽く牽引したところ胎盤が膣外に娩出された。また、胎盤に引き続いてテニスボール大の暗赤色の固まりが膣口に突出し、患者は強い痛みを訴えた。診断として正しいものをひとつ選べ。 a.頸管裂傷 b.子宮破裂 c.弛緩出血 d.筋腫分娩 e.子宮内反症 |
[解答]e
[解説]胎盤を剥離させようと牽引したら暗赤色のかたまりが突出して激痛を訴えたというのは、子宮内反症の典型的例である。全身麻酔下の用手整復、無理な場合は開腹手術を行う。
19.次の文を読み、1)と2)の問いに答えよ。 34歳の2回経産婦。本日(妊娠34週5日)突然性器出血および下腹部痛が出現し、当科に緊急搬送された。来院時、患者は持続する強い下腹部痛を訴えており、顔面は蒼白、血圧80/50mmHg、脈拍120/分、呼吸数18/分、子宮は板状硬であった。膣鏡診では、血性の羊水流出が認められた。超音波検査では胎盤は子宮底部に付着し著名な肥厚像を認めた。内診所見は、外子宮口かい大度2cm、展退度70%、先進部は児頭小泉門で下降度sp-1、子宮口位置は後方、硬度中等度であった。胎児心拍数基線は120bpm、基線細変動は7bpmで、一過性頻脈は認めず、遅発一過性徐脈が認められた。 19−1)診断として正しいものをひとつ選べ。 a.常位胎盤早期剥離 b.前置胎盤 c.弛緩出血 d.子宮破裂 e.仰臥位低血圧症候群 19−2)この患者に対してまず行うべき処置として正しいものをひとつ選べ。 a.帝王切開術 b.オキシトシンの点滴静注 c.人工破膜 d.吸引分娩 e.β2刺激剤の点滴静注 |
[解答]1):a 2):a
[解説]性器出血、顔面蒼白、血圧低下、子宮板状硬、腹痛、胎盤の肥厚像とあり、常位胎盤早期剥離であると考えられる。Bishop scoreは6点である。常位胎盤早期剥離に対する基本方針は、「可及的速やかな逐娩(4~6時間以内)」である。この場合、早急な経膣分娩は不可能と判断し、帝王切開を行う。軽症例や経産婦で分娩良好な場合は子宮収縮剤+人工破膜を行うこともある。
20.30歳の初産婦。妊娠38週0日に自然陣痛発来し、入院となった。外子宮口改題度6cmの時点で、胎児心拍数陣痛図で胎児仮死の徴候が発現したため帝王切開分娩を行った。児は2560gの男児であった。娩出1分後の新生児は弱々しくてい啼泣し、筋緊張は不良で、カテーテルによる口腔内吸引で顔をしかめる。四肢にチアノーゼを認め、心拍数は80/分。この児にまず行うべき処置について正しいものをひとつ選べ。 a.気道内吸引 b.マスクによる人工換気 c.気管内挿管による酸素投与 d.アシドーシスの是正 e.心マッサージ |
[解答]b
[解説]a×気道内吸引はしすぎると気管れん縮の危険性が増すため要注意である。
b○心拍100以下の場合はまずマスク換気を考える。
c×マスク換気において心拍100以下の場合は挿管によるコントロールが必要となる。
d×アシドーシスの補正よりも呼吸を安定させる必要がある。 e×心拍があるので不要である。
21.妊産褥婦の精神障害について、正しいものをひとつ選べ。 a.マタ二ティー・ブルーズは妊娠後期に起こりやすい。 b.産褥期うつ病は、産褥1ヶ月以内に発症することは多い。 c.マタ二ティー・ブルーズの治療には、向精神薬を用いる。 d.産褥期精神障害のなかで最も多いものは、うつ状態である。 e.重症の産褥期精神障害を有する症例では、母児隔離による症状憎悪を避けるため、母児同室を奨励する。 |
[解答]d
[解説]a× 分娩後数日で発症する。産後女性の70%にみられ、一般的にあるため正常反応として「障害」とはみなさない見方が強い。数時間から数日続く。
b× 普通、産後8~10週たってから。 c× 自然寛解することが多い。
d○産後女性の10~15%に見られる。 e?軽症例では母児同室を勧めるらしいが…
22.30才、G1P1の褥婦。経膣分娩後に一旦退院したが、産褥15日目から39.0度の発熱が2日にわたって続くため来院した。考えにくい疾患をひとつ選べ。 a.乳腺炎 b.子宮内膜炎 c.子宮内膜ポリープ d.気管支肺炎 e.尿路感染 |
[解答]c
[解説]産褥の子宮内膜ポリープは子宮内に遺残した胎盤から発生することがあるが、産褥15日というのはポリープが形成されるには早すぎるのでcは考えにくい。他の選択肢は感染症であり、この場合否定する根拠に欠ける。
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